演劇を15年やってます。
ありがたいことに色々と質問をいただくので、答えてみました。
質問一覧
どうして演劇はじめたの?いまはどこに所属してるの?いままでの出演作は?演劇ってどんな種類・ジャンルがあるの?役者以外にどんな役割があるの?演劇ってどこで観れるの?演劇の情報ってどこで知れるの?演劇ってチケット代高くない?稽古ってなにしてるの?セリフってどうやって覚えるの?本番までのスケジュールって?芸能人で演技がうまい人って誰?演劇の好きなところは?次の公演いつ?
どうして演劇はじめたの?
私が生まれたてのころ、産院の看護師さんたちがザワつくくらい泣き声が大きかったそうです。「こんなに声帯が強靭なんだから、声を使うことを何かさせなければ……」と思った母親が習い事をいろいろと探してくれ、10歳のころに地元に新しくできた「市民劇団」に入ることになりました。
地元の歴史とかを題材にしたミュージカルをやってる劇団で、演技・ダンス・歌ひととおりプロに教えてもらいました。とてもありがたいですね……。
演技の先生に「大学演劇部で出会って、その後自分たちで劇団を立ち上げた」人たちがいて、なんとなく自分の将来像として意識をするようになったりもしました。(実際、ほぼその通りの道をこれまで歩んできました)子どものころに素敵な大人にたくさん出会うのって財産ですよね。感謝の気持ちでいっぱいです。
ちなみにカバー画像に使ったのは、卒業した市民劇団にOG出演したときの写真。感慨深かったです。

いまはどこに所属してるの?
Mr.daydreamerというとこです。
沢見さわという芸名で活動してます。
いままでの出演作は?
まとめました(出演・スタッフ参加どっちも載せてます)
サムネはそれこそ10歳のころかな? オズの魔法使いのカカシ役でした。
アイライン太すぎて目がまっくろけっけですね。
演劇ってどんな種類・ジャンルがあるの?
これけっこうよくいただく質問です。
私としては「ジャンル気にせず好きなのを観たらいいですよ〜!」と答えたいところですが、少しだけ説明がんばります。
ウィキペディアの「演劇のジャンル」を見るとなんとなく全体を眺められます。(あくまでウィキなので参考程度に……)
あと、artscape 現代美術用語辞典ver.2.0の「劇場」の説明文を読むのもおもしろいです。
↑を読んだ方、気づいていただけたでしょうか。
日本の演劇は、新劇→アングラ→つか・野田・鴻上の時代を経て、いまはとても小さい単位に散り散りに分かれてしまっているんです。つまり、「ジャンル」としての力を失っているんですね。(「2.5次元」は最近生まれた貴重な一大ジャンルですね、希望の光!)
ムーブメントとは呼べなくなった現代の演劇は、師匠弟子の関係や、劇団〇〇の系譜、みたいな、人や団体の繋がりによってゆるやかに種類が分かれている感覚です。
なのである意味、ひとつの劇団はひとつのジャンル、それぞれの団体が自分の色を出して作品を作っているのも演劇の魅力だったりします。
このあたりの話は私も勉強不足で迂闊なことが言えないのでここまでにさせてください!(この話だけで大学の授業になるくらい) 興味をもってくださった方は、「演劇史」関連の書籍や資料を読んだりすると面白いですよ。
そして、ジャンルというほどではないですが、私がよく取り組んでいるのは「小劇場演劇」です。(なので私の話も小劇場演劇がメインになります)
演劇というとおそらく博多座やキャナルシティ劇場といった大きな舞台のイメージが強いと思いますが、小劇場演劇は多くて100席、ときには10席未満で公演を打つこともあります。
舞台との近さや、役者さんの姿を間近に見られることに驚くはず! ぜひ一度体験してほしい世界です。
役者以外にどんな役割があるの?
演劇は「総合芸術」と呼ばれるように、ありとあらゆるスキルによって成り立っています。
- 演出 映画でいうところの「監督」ですね。その作品をどう解釈し、どうアウトプットするかを決める役割です。(演出の話は奥が深すぎるのでこのへんで……。)
- 脚本 既成 or オリジナルに分かれます。既成はすでにある脚本のこと、過去の名作などを取り上げたりします。オリジナルは書き下ろし。脚本と演出を1人で兼任することもあれば、脚本と演出を別の人間が担当したりします。
- 照明・音響 演劇スタッフ二大巨頭! いつもお世話になりまくってます。演劇を見てるとついつい役者さんの演技に集中すると思いますが、その演技をそっと支えているのが音と光ですね。 照明は「灯体」と呼ばれる機材を「バトン」という舞台上の棒に吊り込みます。シーリング・地明かり・SS・サス・エリア・凸・フレネル・LED・パーライト……あたりがよくきくワードでしょうか。 音響もスピーカーの置き位置や、音量やLRの振り方、音選びなどなど、専門スキルによって成り立っています。DJパフォーマンスを組み合わせた演劇とかもあって面白いですよ。 私は照明・音響にはそこまで詳しくないので、照明家・音響家の友達の話をほうほうと聞いたり、仕込みのときにひたすらコードを巻いて手伝ったりしてます……笑
- 衣装・大道具・小道具・美術 なんか文字数が大変なことになりそうなのでこの4つはまとめて……! 一つだけ例を……。 もしあなたがスタッフだったとして、脚本に「りんごを取り出す」と書かれていたら、どんなものを準備しますか? 「本物のりんご」が1番シンプルな回答だと思いますが、演劇の場合はそれに限りません。例えば、「今回の舞台セットは白が基調だから、白く塗ったりんごの模型にしよう」とか、「衣装のカーディガンを丸めてりんごに見立てよう」とか、はたまた「ものは準備せず、役者の動きでりんごを表そう」という判断もあるかもしれません。 こんな感じでひとつひとつを吟味していく衣装・大道具・小道具・美術のお仕事、奥が深いですよね。
- 舞台監督 演出が作品の統括だとしたら、舞台監督は「舞台」の統括です。小屋入り(本番前の劇場での準備期間のこと)の間は、照明・音響・大道具等々、ありとあらゆる領域が入り乱れ、トラブルも次から次に起こりますが、それらをすべて把握し、タイムキープをし、優先度を瞬時に判断し、対応するのが舞台監督です。
- 宣伝美術 チラシをはじめとし、ポスター・パンフレット・SNS用の画像などをデザインするお仕事です。私がよく担当しているのがこちら! 無限に語れるので、今日のところは過去の制作事例だけ載せます!
- 制作 制作、ああ制作。私も自分の劇団ではよく担当するんですが、めちゃめちゃ大変です。無限に仕事があります。プロの制作さんのインタビュー記事で、「団体によって、あるいは制作者によって色々だと思いますが、公演の立ち上げから終了までのあらゆることだと思っています。」とあるように、まじでありとあらゆる仕事を担当します。素敵な記事なので、ぜひインタビュー全文もご覧ください。
演劇ってどこで観れるの?
博多座・キャナルシティ劇場、あとは西鉄ホールとかは有名だと思いますが、そのほかにも劇場はたくさんあります。
私がよく行くのはこのへん。
- 北九州芸術劇場(小倉)
- 枝光アイアンシアター(枝光)
- ぽんプラザホール(キャナルシティの隣)
- 甘棠館Show劇場(唐人町)
- 湾岸劇場博多扇貝(築港)
- サイエンスホール(六本松、科学館の中)
- 久留米シティプラザ(久留米)
- 冷泉荘(中洲川端、演劇もできるギャラリー)
- ハコ町家・ハコビル(箱崎、古民家)
- art space tetra(博多区須崎町、ここもギャラリーに近い)
- SRギャラリー(大名、ギャラリー)
……多いな!たぶん書き漏れもあります。
北九州芸術劇場は「芸術劇場」と名がつく通り、良質な劇場です。劇場初心者の方は、まずここから行ってみると安心。福岡市にも芸術劇場ほしい〜!
リストの下のほうにいくつか書きましたが、THE劇場だけではなくギャラリーや古民家、カフェといった空間も使われています。
あとは屋外公演も楽しいですね、大きなテントで芝居小屋たてたり、そのまま青空のもとお芝居したりもします。
静岡にはなりますが、ストレンジシードという屋外演劇のお祭りがあります。
このお祭り大好き!また行きたい!
演劇の情報ってどこで知れるの?
演劇情報のサイトがあります。
おすすめは
福岡・九州だとmola!
全国だとCoRich
好きな劇団ができたら、SNSをフォローしたりメルマガに登録したりするのもおすすめ。
あとは実際に劇場に通うようになると、「折込チラシ」で選ぶのも楽しいです。
座席やパンフレットにたくさん近日・近隣で開催される公演のチラシが挟んであります。(映画館にチラシがたくさん置いてあるみたいなやつですね。)
演劇ってチケット代高くない?
高い!!!!!!のはとてもよくわかります、たけーよなまじで……。映画とか2000円以下で見れるのによう……。
ただ、運営側になって知ったけど、チケット代高かろうが赤字になりがち!!!!!
演劇って生きてる人間たくさん使うし、劇場代高いし、客席数も限りがあるし、……うわーん!
赤字の愚痴はこれくらいにして、無料で楽しめる演劇情報を置いておきます。ぜひおうちでお気軽にどうぞ🏠
- これが本当に無料でいいんですか!?!?ってなってるYouTubeチャンネル ここに載ってる演劇作品はまじで全部良質(演劇以外もたくさんあるようなのでぜひそちらも楽しんでください)
- 演劇は「戯曲」を読んで楽しむのも素敵ですね。 声に出されるための言葉なので、実際に口に出してみるのも楽しいです。 最近リリースされて歓喜した「戯曲デジタルアーカイブ」というサイトがあります。(劇作家協会に所属してる人のしか読めないけど)
- ちなみに私の所属劇団も過去の上演映像無料公開してます☺️ リストでまとめてます
稽古ってなにしてるの?
劇団によってかなり異なりますが、オーソドックスな内容だとこんな感じ。
- 発声練習 知ってる人も多いのかな? メジャーどころだと「あえいうえおあお」とか「あめんぼあかいな」とか「外郎売」とかですかね。発声練習の話だけで1記事書けるくらい奥深いです。
- 柔軟体操、筋トレとか体づくり 一般的な筋トレ柔軟はもちろん、独自のメニューを持ってる劇団も多いです。その中のひとつで、衝撃を受けたのが「鈴木メソッド」。鈴木忠志という演出家が考案した身体訓練法です。これはとにかく1回見てください!
- ワーク(ワークショップ) イメージとしては「演劇遊び」でしょうか。演技や作品にとって必要となるスキルを、遊びのようなものを通して身につけていくものです。有名なものでいうと、「拍手まわし」。アイコンタクトをとりながら、拍手をキャッチボールのように回していくゲームです。これで「目線や息をあわせること」「相手の様子を察知すること」「相手に届けること」といったスキルが身につきます。この他にもいろいろあって、純粋に遊びとしておもしろいものも多いですよ〜。
- 立ち稽古 台本を持ったまま、軽く立ち位置などをつけながらやってみる稽古のことです。
- シーン練 シーン単位で切り分けて立ち位置や動きなどを細かくつけていく稽古のことです。
- 通し 作品の最初から最後までを通してやってみる稽古です。
劇団によってぜんぜん違いますが、これだけ知ってたら充分でしょう!演劇は、「客演さん」として他の劇団からゲストで役者さんを呼ぶことも多いので、独自の稽古メニューはきちんと共有する時間を設けています。
ちなみに私の所属劇団はたまに稽古場レポートを上げてるので、もっと詳しく知りたい人はぜひぜひこちらも。
セリフってどうやって覚えるの?
どうやって、とかじゃないです、覚えるんです。
というように、基本は根性論です。覚えようと思ったら覚えられる!(圧)
根性論で終わらせるのもあれなので、ちょっと工夫した覚え方を紹介すると、
私は「自分のセリフ部分を無音にして、脚本を読み上げた音声」を準備して、それを聞きながら無音部分で自分のセリフを暗唱したりしてます。
まあ最近はその音声を作るのがめんどくさくてほぼやってないです。
ほんと、どうやって覚えてるんでしょうね……。(根性)
本番までのスケジュールって?
一作品つくるのに大体3〜4ヶ月とかですかね。1年くらいじっくり時間をかけて作ったり、合宿形式で数週間で一気に作ったりすることもあります。
流れとしてはこんな感じ。
稽古:現場によるけど週に3〜4回くらい、1回3時間くらいが多いですかね。稽古期間中に各スタッフさんとの打ち合わせや大道具小道具の作成なども行います。
↓
小屋入り:本番前に実際の劇場で準備を行う期間です、1日2日くらいのときもあれば、1週間くらいガツっと期間をとったりもします。小屋入り期間はまじで大忙しです。
仕込み:照明・音響機材などの配線や、大道具やセットの建て込み作業といった舞台空間の準備の総称。例えば照明だと、「吊り込み」や「シュート」といった作業が発生します。
場当たり:実際の劇場空間で稽古をすること。段差とか出ハケの確認もここで行います。
シーン作り:吊りこんだ照明機材を組み合わせて、シーンごとの照明を最終決定する作業。
レベルチェック:音響の音量をシーンごとに細かく決めていく作業。
きっかけ練:音響照明のきっかけが混み合っていて難しいシーンなどを取り出して練習すること。
ゲネ:本番とまったく同じ環境(機材や衣装など)でリハーサルをすること。
↓
本番:土日で2、3公演だけという現場もあれば、1ヶ月ロングランみたいな現場もあります。お客さん受付して本番やってお見送りして、終わったら原状復帰して、手直しが必要だったら加えてまた本番……の繰り返しですね。
↓
バラシ:小屋入り前と同じ状況に劇場を片付けることです。仕込みは数日かかりますが、バラシは大体半日〜1日で終わります。
なかなか忙しいですね。
会社でも「稽古って週4もあるの?!」って驚かれるし、演劇の現場でも「正社員なの?!」と驚かれます。
スケジュール管理能力が磨かれます。そして有休はすべて演劇に消えます。あとはFusicのフルフレックス制度と応援してくれる文化のおかげでギリギリなんとかなってます。
芸能人で演技がうまい人って誰?
これめっちゃ訊かれるんですが、ごめんなさい、「わかりません」と答えさせてください……。
なぜわからないのか?
- ドラマ・映画といった映像作品と、演劇における演技は別物だから(と私は思っているから) 演劇は作品の最初から最後までを一貫して演じるのに対し、映像は細かくカットを分けながら、かつ時系列もバラバラに撮影を行います。はじめて映像に出演した演劇の役者は、あまりの違いにかなり苦しめられるそうです。映像の芝居と演劇の芝居、完全に別物だよな……と私は思っています。そして映像の経験がない私にとっては、映像における芸能人の演技がどうなのか、という批評がちょっとむずかしいです……。
- 芸能人という存在は「生の質感」を感じることが難しいから 有名な芸能人が出てる舞台を観に行ったことがあるんですが、客席から舞台があまりに遠い! オペラグラス必須です。あと、プロフェッショナルのお仕事として音響照明大道具などなど、演技以外の魅力でも舞台が満たされています。私程度では、そういった周辺環境を度外視して演技の良し悪しを判断することが難しいです。なんか芸能人ってほんとに生きてるのかな……?って思うことありません? そういう感じです。
- 演技自体に良い/悪いはないから 私は長く演劇をやっていますが、だからといってうまい芝居ができる、とは思っていません。はじめて舞台に立つ人にまったく敵わない、と思うことも多々あります。どんなに不器用に見える演技でも、その演技が光る作品、その演技こそが求められている作品はいくらでもあります。演劇において、唯一の正解は存在せず、「その作品」に対してどれだけ向き合えるかが重要だと思っています。
こんな理由で「演技がうまい芸能人」はわからないんですが、
もちろん「演技が好き」な人ならいっぱいいます! 二階堂ふみと岸井ゆきのが好き!
演劇の好きなところは?
Q「演劇の好きなところはどこですか?」
A「いつもと違う自分になれるところ!」「お客さんに元気を届けられるところ!」
……と、答える人が非常に多くて5万回くらい聞いたことがあるんですが、私はそう思えないです。(もちろんそう答える人は素敵です)
私は、演劇やったところで自分はいつまでたっても自分だし、お客さんは演劇なんてなくたって映画とかアニメとかアイドルとか音楽とかもっと気軽な娯楽で既に元気もらってると思っちゃうんです。どうしても。特にこのオンライン時代、劇場に来てくれる人なんてほんの一部です。
そんなひねくれた私が、演劇いいよなーと思うポイントは以下。
- ほんとにいろんな人と出会えること、あらゆるスキルを組み合わせた総合芸術であること
- 観てくれる人の「想像力」でどこにでも行けること
- 時間と空間の芸術であること、その作品はその瞬間にしかそこにないこと(そしてその作品に出ている自分もそこにしかいないこと)
- 「時代」を映す芸術であること
- 日常生活では失われる感情や身体感覚を取り戻せること
- 再演という文化(過去の戯曲をいまこの時代でやる意味を問うこと)
- 舞台に立つと、「見られる存在」としての強い自意識とともに、そこから解放される感覚もあること
結局、演劇、好きなんだと思います。
次の公演いつ?
「次の公演いつ? 観に行きたい!」これが会社で一番聞いてもらえる質問かも! この質問大好きです! いつもありがとうございます
次は客演として「ギンギラ太陽’s」に出ます☀️
お待ちしております〜!
〜〜〜〜
たくさん回答しましたが、このほかに演劇について気になることがあればいつでも質問ください!
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